味の素グループの歩み

「味の素®」容器の変遷

1951(昭和26)年11月21日「味の素®」30g食卓瓶が発売されました。

1951年頃の30gふりかけ式食卓瓶

1951(昭和26)年11月21日「味の素®」30g食卓瓶が発売されました。

この商品の画期的なところは、従来「味の素®」を使用する場合、容器から耳かき大のスプーンで取り出していたものを、サッサッサッと瓶から直接振りかける様式に変え、中身が無くなったら缶や袋から瓶に詰め替えられるようになったことです。瓶の中蓋には11穴あり、穴の直径は2.7mm、3振りで0.15~0.2g出るように作られました。これは、すまし汁1杯分の量を目安にしています。このため調理場でも食卓でも簡単に使用できるようになり、「味の素®」の使用範囲を拡大し、使用習慣を一変させる働きをしました。

今回は、「味の素®」の容器の変遷を見てみましょう。

1910年頃 発売当初の「味の素®」

1909(明治42)年5月20日「味の素®」の一般消費者向け発売の際は、「薬品用のガラス瓶」に入れ薬種問屋を通じて薬の小売店に販売を委託しました。創業時の「味の素®」は純度85%位で、色は褐色がかった粉末状のものでした。赤いラベルには商標登録された「美人マーク」と共に「池田博士発明」の文字があります。右書きの「味の素」の文字の上に「AJINOMOTO」とローマ字が記され、ハイカラなイメージで新しい商品の登場を印象付けています。また一番下には「TOKYO JAPAN」と書かれ、早く国際商品にしたいという創業者の意気込みが伝わってきます。

1926年 ヘリングボーン式巻取缶

「味の素®」がだんだん世の中で普及しはじめると、類似品が出始め、「味の光」「味乃素」「味の王」などとまぎらわしい商品名を意図的につけて販売されました。1926(昭和元)年に当社の前身である鈴木商店社が調査したところ、類似品は国内だけで関西中心に35銘柄にのぼっていました。これらの製品は品質的にも問題があり、この対策として登場したのが東洋製缶社で開発され、現在でもコーンビーフなどで使用されている「へリングボーン式巻取缶」です。権利を当社と共有したこの缶は、1926年に全面的に採用され、1968(昭和43)年6月に「かぶせ蓋」式に代えられるまで使用されました。

1927年 宮内省御用品

2代社長 鈴木忠治

発売から18年経った1927(昭和2年)4月に「味の素®」が、宮内省の買い上げ品の指定を受け毎年3回製品を上納するようになりました。この時代の製品も褐色がかった微細な粉末でしたので、川崎工場内に「御用品謹製所」を設け特別に精製し上納したのです。

当時技術部門の責任者であった鈴木忠治は、全ての製品を上納品と同じ品質に向上させることに取り組み、1933(昭和8)年には「味の素®」の全製品が100%結晶として生産できるようになりました。これで当時出回った類似品や偽造品との品質の差は歴然となりました。

また1927年には、「金色缶」(1125g入り)が発売されましたが、1933年頃から関西で行われた小分けして販売する「量り売り」は、衛生上の観点や類似品混入などの点から問題が多く、その対策に頭を悩ますこととなります。

なお1928(昭和3)年10月には重量を匁(もんめ)に代えてグラム制を採用しました(1匁=3.75g)。1926(昭和元年)から1934(昭和9)年にかけては、食卓で使用する詰め替え用のアルミ、ガラスさらに陶製容器が相次いで発売されました。

1926年 アルミ製食卓容器

1931年 ガラス製食卓容器

1934年 陶製食卓容器

1927年 金色缶(1125g)

1941年 ボール紙缶(戦時中)(左50g、右200g)

その後、戦争中は容器の素材が入手困難となってきたため、1941(昭和16)年からは全面的に「段ボール紙缶」となり、戦後1951(昭和26)年11月まで使われました。  そして、冒頭の30g食卓瓶発売となり、1955(昭和30)年4月には優れた販売成績を残した25gのポリセロ袋(ポリエチレンとセロハンをラミネートしたフィルムから作る袋)が販売されました。また1958(昭和33)年7月には「味の素®」の振り仮名が「ぢ」から「じ」に変更されています。

1962年 「ハイ・ミー®」瓶と「味の素®」調理瓶(80g)

1962(昭和37)年9月18日には「味の素®」80g調理瓶が発売されました。この中蓋には34穴あり、穴の直径は2.8mm、3振りで0.4g出るようになっています。これはすまし汁2杯分を目安にしています。また振り掛ける場合に湿気による目詰まりを防ぐ必要があったので、先の食卓瓶に比べ、口の面積を広くし穴の数を増やしたのです。

このように、いろいろ工夫して作られたわけですが、世間では「味の素社は瓶の穴を大きくして随分儲かった」という噂が広がりました。しかし、このころの「味の素®」の売上高をみてもそれまでの伸びとかけ離れた増加を見たという事実もなく、面白おかしく伝えられたものと思われます。

1973(昭和48)年10月からは、米国のデザイナー、ソールバス氏に依頼して作成したコーポレートマークが創業以来の「美人マーク」に代わって「味の素®」の瓶缶につけられるようになりました。

左:1982年 企業広告「さとうきびから、味の素®。」頃の卓上小瓶(30g)
右:1984年 デザイン変更、呈味力を強化した卓上小瓶(30g)

1980年代に入ると、消費者に正確な商品情報を知っていただくために、原料訴求活動を始め、1982(昭和57)年から「麦からビール、サトウキビから『味の素®』」のキャッチフレーズを使い キャンペーンを展開しました。1984年(昭和59)年には、卓上小瓶のデザインを変更し、成分については、5´-リボヌクレオタイドナトリウムを1.5%から2.5%に増やし、呈味力(ていみりょく)を強化し品質の向上を図りました。
※呈味力:味を現す特有の性質のこと。

左:2005年 アジパンダ®75g瓶、
右:2012年パチクリン35g瓶

21世紀に入ってからは、2005年5月からは「アジパンダ®」キャンペーンがスタートし同年10月には早くも「アジパンダ®瓶」が100万本を突破しました。2012年2月にはWebの人気投票でデザインを決定した「パチクリン」も登場しています。
このように、うま味調味料「味の素®」は、時代とともに社会の変遷や生活者の意識の変化を取り入れ、姿を変え続け、100年間余り食卓や調理場にうま味と話題をお届けしてきました。