2012年2月14日
〜うま味成分が胃のどの部分で受容されるのかを解明〜
平成23年度日本消化管学会最優秀賞(基礎部門)を受賞
 味の素株式会社(社長:伊藤雅俊 本社:東京都中央区)のイノベーション研究所フロンティア研究所味覚・消化管研究グループは、胃粘膜の細胞における、うま味成分の受容体についての研究により、2月10日および11日に開催された第8回日本消化管学会(宮城県仙台市)において、平成23年度日本消化管学会最優秀賞(基礎部門)を受賞しました。

 当社では、おいしさのメカニズムについての研究を進め、舌だけでなく胃にもうま味を感じる仕組みがあり、うま味成分であるグルタミン酸が胃に入ると消化吸収がスムーズに行われることを明らかにしてきました。今回の受賞は、特殊な技術を用いて胃のどの部分でうま味成分が受容されるのかを解明したことが評価されたものです※1、2。受賞した研究の概要は以下の通りです。

【研究概要】
 うま味成分のグルタミン酸が胃粘膜に作用することはわかっていましたが、胃粘膜の中でもどの細胞にグルタミン酸の受容体があり、どんな働きをしているのかということはわかっていませんでした。
 今回、当社の味覚・消化管研究グループ(中村英志博士ら)は、ラットの胃粘膜の細胞を種類別に単離・培養することに成功し、グルタミン酸の受容体は特に胃酸や消化酵素などの分泌を強力に抑制するホルモンを作り出す細胞(ソマトスタチン細胞)に豊富に存在していることを見出しました。
 本来、私たちの胃では、胃酸や消化酵素の分泌によって胃の内部が荒れないよう、このホルモンがそれらの分泌にブレーキをかけています。しかし、食事などからグルタミン酸を受容した際には、このホルモンの分泌が抑えられると考えられます。つまり、グルタミン酸の摂取によって、このブレーキがゆるやかとなり、消化が促進される、という新たな消化の仕組みが見えてきました。

 胃でうま味を感じる仕組みは、食物の消化吸収活動と深く関係しています※1、2。今回具体的に、どのように胃でうま味成分が作用するかの一端が解明されたことで、うま味を上手に活用して消化機能の低下で懸念される高齢者の食欲不振や新興国における低栄養の問題を解決できる可能性がさらに高まったと考えられます。

 当社では「おいしさ、そして、いのちへ。」というコーポレートスローガンのもと、今後も世界の食の課題解決と人々の健康な生活に貢献していきます。

※1.   Nakamura E, Hasumura M, Uneyama H, Torii K. Luminal Amino Acid-Sensing Cells in Gastric Mucosa. Digestion 838 suppl 1): 13-18, 2011
※2.   Nakamura E, Hasumura M, San Gabriel A, Uneyama H, Torii K. New frontiers in gut nutrient sensor research: luminal glutamate-sensing cells in rat gastric mucosa. J. Pharmacol. Sci. 112: 13-18, 2010

報道関係の方向けお問い合わせ先:pr_info@ajinomoto.com
 
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