アミノインデックス®

血液中のアミノ酸で
がんのリスクを評価する
「アミノインデックス®

Healthcare Food & Wellness ICT Green

アミノインデックス®〈 目 次 〉

がん検診へのひとつの回答。アミノ酸でがんのリスクを評価する。

日本のがん検診の受診率は、米国・英国に比べて低い傾向にあります。とくに女性の子宮頸がんの受診率は、米国・英国が80%程度であるのに対して、日本は15%程度。その背景には、時間がない、手間がかかるといった意識があると考えられています。しかも、これまでの画像診断や腫瘍マーカー等によるがん検診では、ある程度、腫瘍が大きくなってから初めて診断が可能であったり、1回の検診では原則ひとつのがんについてしか診ることができないといった制約がありました。がんを早期に発見し、リスクから命を守るために求められるのは、より簡単な検査によって精度の高い検診を効率よく受診できるようにすること。私たち味の素グループの「アミノインデックス®がんリスクスクリーニング」は、その課題へのひとつの回答です。

出典:国立がん研究センターがん情報サービス
※わが国の検診受診率は、平成19年地域保健・老人保健事業報告に基づくデータです。また、米国の受診率は、CDCのBRFF(Bshavioral Risk Factor Surveillance System、2008年)、英国の受診率はNHS Cancer Screening ProgrammersのAnnual Report(2009年)に基づきます。

血中アミノ酸濃度のバランスが
新たなバイオマーカーになる

味の素グループの研究開発はアミノ酸をコアとしており、医薬用・食品用などの生理機能を研究するために、これまでも人の血液中のアミノ酸分析が基盤的な研究として行われていました。
「血液中のアミノ酸濃度のバランスの変動を見ることで、バイオマーカーになるのではないか?」
これまでさまざまな疾患で血漿中のアミノ酸濃度が変化することは知られていましたが、個人差が大きいことやアミノ酸分析の再現性の問題から臨床検査としては先天性代謝異常や肝疾患などで使用されているだけでした。2000年頃、味の素グループの研究開発チームは、血漿中のアミノ酸プロファイルに着目し、血漿中のアミノ酸バランスを解析することでさらに広範な健康状態を解析できるかもしれないと考えたのです。そうして世界初となる、血中アミノ酸のバランスで健康状態や病気のリスクを解析するサービス「アミノインデックス®」の開発が始まりました。

二つの技術のイノベーションが、事業化の扉を開いた

「アミノインデックス®」の開発は、味の素グループ内での二つの技術の出会いによって可能になりました。ひとつは、バイオインフォマティクスの手法を用いて、血液中の複数アミノ酸の濃度バランスの違いを統計的に解析・指標化する技術。もうひとつは、高感度かつ短時間でアミノ酸を分析する技術。2002年、研究開発チームは、1検体につき約2時間程度必要としていたアミノ酸分析の時間を約7分に短縮するアイディアを生み出します。液体クロマトグラフ質量分析計(LC/MS)を用いれば、質量でも分離できるために分析時間を大幅に短縮することができました。また、アミノ酸を分離する前に誘導体化することで高感度に定量できたのです。

共通の目的に向かって
医療機関とともにエビデンスを構築

アミノ酸を用いたがんリスクの解析は方法論的にも概念的にもまったく新しいものであったため、エビデンスを構築するデータの蓄積が必要でした。がんで亡くなる人を減らしたいという共通の目的をもった私たちは、臨床施設や人間ドッグの医師の協力を得て、データの蓄積を進めていきました。

その結果として、肺がん、胃がん、大腸がん、乳がん、前立腺がん、子宮がん・卵巣がんについて、がんの種類によって血液中のアミノ酸濃度のパターンが健康な人とは異なっていることが明らかになりました。そこで各がん種ごとに、現在がんであるリスクを評価するAICS式を作成したのです。

三井記念病院 総合健診センター
特任顧問 山門實 先生

さらに可能性が広がるアミノインデックス®

わずか5mLの採血で、一度に複数のがん種の現在がんであるリスクを評価できる検査、アミノインデックス®がんリスクスクリーニングは、現在、日本国内956施設の医療機関で実施されています(2015年7月時点)。味の素グループは今後、日本国内においては年間で数十万人の検査を手掛けることを目標としており、また海外での事業展開に向けてのステップを進めています。また、「アミノインデックス®」はがんだけでなく、メタボリックシンドロームや、糖尿病、脂肪肝などの生活習慣病のリスクについても評価する技術を確立しつつあります。さらにアスリートや高齢者の健康管理などへの適用についても研究開発を進めています。
味の素グループは、これからもより多くの人が、病気を未然に防げるように、より健康的な生活ができるように、さらなる可能性の扉を開いていきます。

Another Innovation Story