味の素グループ統合報告書2017
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を与えました。企業の持続的な成長ということが大きな論点であり、企業が長期的に成長し続けるためにはどうしたら良いのかということが注目されるようになりました。味の素グループは、こうした考えに先駆的に対応し、 その取り組みを開示しています。これを一つにまとめ上げることができるのは、もともとしっかりとしたベースがあるからこそであり、私はそこに驚きを感じています。当社は、利害関係が異なる様々なステークホルダーと企業活動全般についての良好なコミュニケーションを図り、味の素グループの持続的成長が、それぞれのステークホルダーの利益にもつながっていくということを理解していただける状態を目指しています。それが、企業価値を高めていく活動そのものであると思っています。投資の世界では公的年金基金がESGを重視するようになり、各運用機関がESGに対する詳細なリサーチを進めるなど、かなり関心が高まっています。特に海外の投資家、とりわけ欧州ではESGの取り組みを重視し、持続可能性という観点から企業を評価する機関が多く存在します。したがって、このタイミングでASVを中心としてESGの取り組みを強化していることを積極的に伝えることにより、投資家との良好なコミュニケーションを生むと思います。また、そういったコミュニケーションを通じて、世界のグローバル企業との相対性も感17-19中計では、マイルストーンとして2020年度に、グローバル食品企業トップ10クラス入りを掲げています。数字に置き換えると、事業利益で1,300億円ほどの規模になりますが、これはビジョンの実現に向けて食品および先行投資型のアミノサイエンスに必要な戦略投資と株主還元を両立し、社会的な影響・価値を高め、社外に対して影響力を発揮していくための最低限必要な規模です。10番目になろうとしているのではなく、財務・非財務で目指す要素が合わさった形がたまたま事業利益1,300億円で10番目の位置づけということです。じ入ることもできるので、それがフィードバックされて自社の活動の更なる進化と結びつくかもしれません。私はこれをポジティブスパイラルと呼んでいますが、味の素グループはそのステージに入っているのだと思います。売上構成比で見ると、約20%がアミノサイエンスです。この分野は先行投資型のビジネスという要素が強く、成果が得られるのに10〜15年かかる場合もあります。長期的な企業価値の向上につながる事業については、コミュニケーションの解像度をしっかりと上げて説明責任を果たしていかないと、ステークホルダーの方々からの理解を得られません。私自身もこの2年間、積極的に対話を重ねてきました。投資家の方たちにもお話しする機会が多いのですが、その際、企業との対話を行うときはまず投資家が企業の考え・理念を十分に理解した上で臨む必要があるということを伝えています。そしてその上で、自分たちの考え方を述べるということです。企業もその際、自社の考え方をしっかりと訴えていくということが非常に重要です。優れた質問を行う質問力といったものを投資家は持たなければなりません。日本ではまだこのあたりが未成熟なところもありますので、味の素グループにはぜひ先陣を切って優れた対話の実現をリードしていって欲しいと思っています。拝見したところ、17-19中計は非常に緻密に組み立てられ、それを丁寧に説明しているという印象があります。投資家から見ると、非常に果敢な決断と目指す方向性がよく理解できる内容になっています。単純に、数字でロジカルに説明するだけでなく、それを成し遂げるために必要な社会価値、非財務の指標までしっかりと示されており、それを財務戦略にまで絡めて落とし込んで説明しているので、自分がアナリストになったつもりで分析すると、これ以上親切なものはないと思います。西井北川西井西井北川北川2917-19中計における統合目標の設定について

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