トウモロコシは、5月下旬に種まきをして、8月下旬から9月にかけて収穫、背丈が2メートルを超えるまで成長します。トウモロコシはあまり手のかからない作物です。だからこそ土地の力や太陽、気温など自然の力に左右されやすい。
暑い年だと、8月初旬から収穫がはじまるし、そうでもないと9月に収穫。その年の天候で成長のスピードが、全然違ってくるんですね。
おいしいトウモロコシになるためには、実がついてからの寒暖の差が大事。夜も暑いままだと糖が澱粉に変わっていく。昼夜の寒暖差が激しいと糖がそのまま残って甘みが強くなる。北海道は、最適な土地です。
収穫時期には、トウモロコシを生でかじって甘みと水分を確かめるんですよ。それでそろそろかな、と感じたら、機械で甘みを測定して一番おいしい状態で収穫できる日を決定します。
実は、トウモロコシは、粒の部分だけでなく、茎や葉、軸や皮に至るまで、丸ごと栄養豊富な有り難い作物なんですよ。
まずは、茎や葉の部分。畑の栄養になる窒素分が多く含まれるうえ、土の中での分解が早い性質なので、畑の栄養バランスを整え、地力を蓄えるのに役立つんです。
トウモロコシの実の収穫時、ハーベスターという専用の機械で地面から30~40cmを残して茎や葉を刈り取って粉砕。そのまま地面にすきこんで緑肥にします。
トウモロコシはジャガイモやタマネギなどの作物と順番に輪作しているので、この緑肥が、次の作物の栄養になるんです。
同じ作物を続けてつくると、その作物に必要な養分だけが少なくなって土地も痩せて、作物も病気になりやすいんですね。だから、間にトウモロコシを作ると畑の土のためにもいいんですよ。
それと、背の高いトウモロコシは根を深く伸ばすので、それもまた土質をよくするのに役立ちます。トウモロコシの根が地面を耕してくれているようなもの。ジャガイモを育てている農家の方によると、トウモロコシの後に植えたジャガイモは丸くてカタチがいいものができるそうですよ。
さらに、工場で、製品にするために実から粒をとった後に残る、ヒゲや皮、軸など。これは牛の飼料として近隣の酪農家さんに提供しています。スイートコーンの皮や軸は、牛の飼料として一般的なデントコーン(飼料用のトウモロコシ)に匹敵するほど栄養が豊富なんですよね。
もちろん、実も無駄なく収穫していますよ。実は、機械で収穫するため、茎が倒れたり、低い位置にあって刈り取れない実も多少あるのですが、それらは後から収穫して農家さんのご家庭の料理に使われているそうです。自分で作ったものは無駄にできないですよね。
ちなみに、畑には時折熊も来ますよ。熊は横着な動物なんで、座って手の届く範囲を食べる。丸くトウモロコシが倒されていて食べカスが散らかっていることもよくあります。以前、品種選抜試験のトウモロコシを数品種栽培したときには、一番美味しく熟したものから食べられていました。おいしいトウモロコシは熊も知っているんですね。
トウモロコシは、茎からもいだらどんどん糖分が下がって甘みが落ちていく。だから、できるだけ鮮度のいいものを買ってください。そして、買ったらすぐに調理するのが一番おいしく食べるコツです。
茹でるのではなく、ラップに包んで電子レンジにかけるのがエコなんじゃないでしょうか。
こちらでは、塩水につけたり、塩をふりかけてからラップに包んでチンしています。それを冷凍しておけばおいしいまま保存できる。収穫時期はおやつとして茹でたものが出てくるし、炒め物やチャーハンにも入れたりしてますよ。採れたてのトウモロコシは、生で食べてもおいしいですよ。甘みがあってジューシーです。
訓子府小学校3年生の総合的学習の時間でトウモロコシの観察をしていて、年に5~6回畑に行ってます。最後の収穫のときは実際に、もいでその場で食べてもらっている。みんな、「フルーツみたいでおいしい!」と感動してくれます。
トウモロコシは、本当に自然の力だけで育つ作物。だから、自然環境のことは気になりますね。ここ数年、種蒔きの時期、気温が低くて雨が多い気がする。北海道は梅雨がないんですけど、ここ数年は雨が多い、と感じます。
自然の恵みをたくさん受け北海道の大地で育つトウモロコシ。 実を食べるだけではなく、畑の栄養、牛の飼料と、トウモロコシは根~茎、葉まで役に立っています。 皆さんもぜひ、旬のトウモロコシをメニューに取り入れて、環境にもやさしい大自然のおいしさを感じてみてください。