土壌調査とその対応

2003年12月24日
味の素株式会社

味の素ファインテクノ株式会社環境調査結果報告

1.背景及び調査目的

味の素グループでは「土壌汚染防止に関する基本方針」を定め、既に川崎事業所において土壌・地下水を中心とする調査を実施し結果をホームページで公開しております。今回、川崎事業所に隣接する味の素ファインテクノ株式会社本社の敷地内につきましても同様の自主調査を行いました。
味の素ファインテクノ株式会社では昭和63年まで塩素化パラフィンの反応溶剤として四塩化炭素を使用していた履歴があり、また味の素(株)川崎事業所で昭和49年まで水銀を触媒とする苛性ソーダを製造していた場所とも隣接することから、これらの物質を中心に土壌・地下水の汚染状況と、敷地外への影響の有無の把握を目的として調査を実施し、結果を2003年10月に川崎市へ報告いたしましたのでその内容をお知らせいたします。

2.調査対象地:味の素ファインテクノ本社敷地(神奈川県川崎市川崎区鈴木町1番2号)

調査期間:2002年10月〜2003年9月

3.調査結果

(1)揮発性有機化合物(VOC)調査結果

はじめに敷地全体でスクリーニング調査(土壌ガス調査)を行い、その結果から環境基準項目で基準値を超過することが予想される地点について、ボーリングによる土壌・地下水中の揮発性有機化合物の調査を実施いたしました。(地下水:26地点、土壌:25地点)
その結果、四塩化炭素、ベンゼン、ジクロロメタン、シス-1,2-ジクロロエチレン、トリクロロエチレンなど8項目に環境基準値超過がみられました(詳細:表1、2)。
四塩化炭素は昭和63年まで溶剤として使用していた履歴があり、その工場跡地の一部で検出されました。ベンゼンはボーリング時に局所的に油分が発見されており、過去に使用していた重油が浸透したものが原因と考えます。その他の揮発性有機化合物は使用履歴がなく、原因は不明です。

敷地外への影響を確認するため、近隣住民側敷地境界を中心に5箇所で観測井戸の設置・ボーリング調査を実施いたしました。その結果は以下の通りです(詳細:表3)。

  • 土壌含有量:すべて基準値以下でした。
  • 土壌溶出量:敷地内部の1地点で四塩化炭素(最大4.4倍)およびベンゼン(最大15倍)の基準超過がありましたが、敷地境界ではすべて基準値以下でした。
  • 地下水:宙水、第1帯水層、第2帯水層すべて基準値以下でした。

したがって、汚染は敷地内に留まっており、地下水を介しての敷地外への影響はないと判断しております。

(2)重金属調査結果

<土壌>上記の観測井戸5地点でボーリング調査を実施いたしました。その結果は以下の通りです(詳細:表3)。

  • 土壌含有量:すべて基準値以下でした。
  • 土壌溶出量:5地点すべてで鉛及び砒素、敷地内部の1地点で総水銀及びふっ素のわずかな基準超過がありました。

<表層土壌>味の素ファインテクノ(株)の敷地はそのほとんどが舗装されていますが、一部花壇や舗装されていない裸地部の表土部分(48地点)の重金属について分析を実施いたしました。その結果、敷地西側(味の素(株)側)で鉛が4地点(最大5.5倍)、総水銀が8地点(最大36.7倍)で環境基準を超過していました。

<地下水>上記観測井戸での地下水調査の結果、以下の項目でわずかな環境基準超過がありました。(詳細:表4)

  • 宙水:2地点で鉛、1地点で砒素、全シアン
  • 第1帯水層:1地点で鉛、砒素、全シアン、ふっ素、硝酸性窒素
  • 第2帯水層:採取した3地点全てでほう素

水銀は隣接する味の素川崎事業所で昭和49年まで水銀を触媒とする苛性ソーダ製造を行っており、そこからの廃棄物由来と考えられます。鉛、砒素に関しては使用履歴がなく原因は不明ですが、敷地全体から検出されており自然由来の可能性が高いと思われます。ほう素も使用履歴がなく、第2帯水層全体で検出されており自然由来と考えられます。その他の重金属については使用履歴がなく、原因は不明です。

地下水調査結果で敷地境界では環境基準を超える物質はなかったことから、汚染は敷地内に留まっており、地下水を介しての敷地外への影響はないと判断しております。

(3)見解

今回の調査で揮発性有機化合物、及び重金属類の環境基準を超える箇所が判明しましたが、敷地のほとんどがアスファルト等で舗装され、封じこまれており、地下水等調査結果により敷地境界外への汚染の流出・拡大も見られず、近隣住民の皆様および敷地内就労者の健康への影響はないと判断いたします。

4.今後の管理ならびに対策

以上の調査結果を受けて、リスク低減の観点から以下のような対策を実施いたします。

  • <1>観測井戸によるモニタリングの継続
  • <2>敷地中央部のタール状油分の掘削除去
  • <3>敷地西側の総水銀汚染対策(味の素株式会社川崎事業所が実施)
  • <4>四塩化炭素を中心とするVOC汚染地域については、味の素ファインテクノ(株)の事業見直しの中で建屋の建替え工事を進め、その際に浄化を計画的に実施いたします。