社長メッセージ

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味の素グループの将来像(ASVの進化)

われわれは、創業の志を受け継ぎ「食」と「アミノサイエンス」の事業を通じて人と地球の健やかな未来に貢献する、持続的成長力のある「確かなグローバル・スペシャリティ・カンパニー」の実現に取り組んでいます。そのマイルストーンとして、2020年度のグローバル食品企業トップ10クラス入りに挑戦しているところです。味の素グループの考える、グローバル食品企業トップ10クラスに入るための具体的な要素は、下記の通りです。

グローバル食品企業トップ10クラスの要素

  • グローバルトップ3に入る事業カテゴリーを中核事業とする。
  • グローバルな事業展開
  • 事業利益額1,300億円以上
  • 事業利益率10%以上
  • ROE10%以上
  • 国連の持続可能な開発目標(SDGs)等の国際的な目標に適合したESG目標と実行計画でイニシアティブを発揮する。

味の素グループのコアコンピタンス、独自性、成長の推進力

「確かなグローバル・スペシャリティ・カンパニー」を実現するためのわれわれのコアコンピタンスは、「独創性」と「開拓者精神」を重んじる「人財」を拠り所とする次の2つです。

ひとつは、アミノ酸の研究・開発・生産から派生した先端バイオ・ファイン技術です。もうひとつは、これをグローバルな顧客や地域社会に適合した事業として進化させていくマーケティング力と営業力です。

例えば、グルタミン酸に代表される「うま味」の追求とそれを応用したうま味調味料「味の素®」は、技術力によって高い品質と手頃な価格でグローバルに普及し、当社グループならではのおいしさ設計技術で各国・地域の料理に合う風味調味料、メニュー用調味料へと進化しています。現在、味の素グループの「世界一のドライセイボリー*」や加工食品を通じて、世界130超の国と地域に「肉や野菜を使ったおいしく栄養バランスの良い食事」を1年間に約2,600億食相当(うま味調味料の使用量より当社推計。2g/食)提供しています。

また、アミノ酸は、「呈味」機能を持つ以外に「栄養」であり、われわれはじめ多くの研究から「からだとこころを整える」機能を持つことも解明されつつあります。これらは、例えば開発途上にある国で離乳期の子どもたちの栄養不良の改善に貢献し、スポーツサプリメントや栄養補助食品、機能性表示食品等を通じて「様々な生活シーンに応じた快適さ」をもっと広げることができるでしょう。

さらに、アミノ酸由来の高機能培地は、急速に進むiPS細胞等の最先端の再生医療研究・開発になくてはならないものになっており、近い将来、画期的な医薬品、医療の実現に大きく貢献できるものと確信しています。

このように、味の素グループは、「先端バイオ・ファイン技術とそこから生まれたおいしさ設計技術」と「徹底した現地・顧客適合のマーケティング力」をコアコンピタンスとして、グローバルに食品事業とアミノサイエンス事業の分野で絶え間なく社会課題を解決することで持続的に成長していきます。

  • うま味調味料と風味調味料(粉末、キューブ等)

味の素グループの社会的使命とイニシアティブ

「21世紀の人類社会の課題」の解決に取り組む

われわれの社会的使命は、開発、原材料調達、生産、販売というわれわれ自身の活動から生活者や顧客の使用シーンに至る全バリューチェーンを通して、また、すべての顧客やサプライヤー、そして従業員と家族の社会生活において、「健康なこころとからだ」「食資源」「地球持続性」の3つに対して常に主体的に貢献していくことです。具体的な課題は、2005年から社外のステークホルダーとの対話を繰り返して、2017年に「当社グループに期待される課題解決」を踏まえマテリアリティ(重要課題)を更新し、統合報告書とサステナビリティデータブックに詳細を掲げています。われわれの中期経営計画をSDGsやパリ協定で採択されたイニシアティブと整合させるにあたり、私が強く意識したのは、17-19中計で掲げた「2020年度統合目標」と「環境長期ビジョン」に示したコミットメントが国際的合意をリードするものとなることです。

重点的な取り組み

われわれは、なによりも万全の品質保証を第一責任とします。その上で創業の志「おいしく食べて健康づくり」を事業の中核にして、発展的に世界中の人々に「Eat Well, Live Well.」をより多くの機会に実感していただけるように、食とヘルスケア、ライフサポートの分野でのモノづくり、サービスを通じてこのイニシアティブを発揮していきます。

経営陣は、このイニシアティブによって社会にもたらす価値と企業として追求する経済価値を同時に高めることで味の素グループを持続的成長に導いていきます。そのためにこの価値共創をASV(Ajinomoto Group Shared Value)と名付け、中長期にわたるビジョン実現のための企業戦略の骨子として味の素グループ全体への浸透を図り、17-19中計を策定し、その遂行をけん引しております。さらに、本中計において、事業活動を通じて次の4つの社会課題に重点的に取り組んでいます。

  • 栄養情報不足による栄養バランスの崩れがもたらす「不足栄養・過剰栄養」
  • 都市への一極集中や急速に進む高齢化等ライフスタイルの変化による多忙化、孤食化がもたらす「こころの健康問題」
  • 「食資源の枯渇とフードロス」の食資源課題
  • 製品ライフサイクル全体での地球との共生(カーボンニュートラル、フードロスの半減、持続可能な調達、持続的な水資源保全、廃棄物のゼロエミッションの実現)

また、持続的成長を果たすために、経営基盤とガバナンスの強化への次の3つのイニシアティブを重点化しています。

  • 味の素グループ約34,000人の全従業員が高い水準で「働きがい」を実感し、ASV向上と高い生産性を追求し続けるマネジメント
    ・「健康経営」  ・多様な人財の活躍  ・日本の「働き方改革」
  • 各国・地域の法規やグローバルルール等も踏まえ、味の素グループの基本的・普遍的な考え方と行動のあり方を示した「味の素グループポリシー」(AGP)とこれに基づく簡素、明確、透明性の高い組織統治、すべての役員、従業員による実践
  • すべての役員、従業員が「味の素グループWay」(「新しい価値の創造」「開拓者精神」「社会への貢献」「人を大切にする」)を実践し、切磋琢磨する組織風土の実現

社会的影響力の発揮

私は、味の素グループを代表して、世界約400社の消費財メーカーとグローバル小売業で組織され、世界中の人々のよりよい生活や持続可能な地球環境といった業界共通の社会課題にリーダーシップを発揮する “The Consumer Goods Forum” のボードメンバーとして、このイニシアティブの普及と啓発に主体的に取り組んでいます。私は、SDGsのような国際的な目標達成についても、これら課題を地域ごとに自分事化し、課題解決のコンセンサス形成と具体的な取り組みへの外部連携がとても重要だと考えています。私は、日本の製造、卸、小売業の各種団体やわれわれが事業展開する主要国でリーダーシップを発揮し、課題解決の輪を広げていきます。

ASVを企業戦略の骨子として、「21世紀の人類社会の課題」の解決に取り組みながら、グループの持続的成長を実現します。

現在までの進捗と課題

現在の味の素グループは、グローバル食品トップ10クラスの企業と比較すると、財務指標、すなわち事業の規模、利益を創出する効率性にまだ課題があります。17-19中計初年度の2017年度は、「世界一のドライセイボリー」事業の成長、アミノサイエンス事業の成長に関しては順調でした。いくつかのM&Aによって海外食品事業の隣地拡大やアミノサイエンス事業のダウンストリーム戦略(ブランド+インサイド戦略)も着実に進展しています。

一方、海外冷凍食品や海外加工食品事業、日本のコーヒー事業に課題が発生し、増収ながら、事業利益は横ばいで推移しました。全グループでのキャッシュマネジメントの効率化に米国等の減税効果もあってキャッシュ・フローは計画通りとなったこともあり、株主還元は「配当性向30%を目途に、安定的かつ継続的に配当」「3カ年の総還元性向50%以上を目途に、機動的な自己株式取得を検討」という方針通りに実現することができました。

2018年度は、新たに顕在化した事業課題に取り組んでいきますが、主要原材料費の高騰等の逆風が強く17-19中計に対しては1年遅れの進捗を余儀なくされています。私自身が、先頭に立って国内・海外グループ会社の構造課題解決を重点化し、修正した成長戦略を推進していきます。そして、2018年度から本格化する国内生産工場の集約やコーポレート部門の効率化に取り組み、2020年度に向け挽回していきます。

ESGに関する非財務目標については、2017年の「栄養に関するグループポリシー」制定に続き、新たに年度ごとの環境目標を設定するほか、企業責任に関する各種ポリシーの明文化を行ったことにより、グローバル食品企業トップ10クラスに着実に近づいたと考えています。2017年度の進捗も概ね計画通りか上回ることができています。企業統治の主要施策においた「働きがい」向上、「日本の働き方改革」も17-19中計を上回る進捗となっています。

財務・非財務を合わせた統合目標のひとつとして掲げた「コーポレートブランド価値」は、2017年度778百万USDと前年度を約10%上回る評価となりました(インターブランド社評価)。現在、2017年10月に刷新した「味の素グループグローバルブランドロゴ」の浸透を中心とするコーポレートブランド戦略を開始したところです。2018年度から日本に加えて新たに米国等の主要事業国でASV価値創造を企業メッセージにしたPR活動を開始し、コーポレートブランド価値を1,500百万USDにする2020年度の目標に向かって計画通り諸施策を実行していきます。

「確かなグローバル・スペシャリティ・カンパニー」に向けたロードマップ

利益を創出し続けられる強い事業構造への変革の実現により、グローバル食品企業トップ10クラス入りを目指す。

  • IFRS基準で、グローバルトップ10クラスは事業利益額1,300億円以上と定義
  • 現地通貨ベース
  • 「2017-2019(for 2020)中期経営計画」(2017.2.17付)参照
  • 年間総合計、一人当たり摂取量に占める割合
  • インターブランド社調べ、「Japan’s Best Global Brands」 公表数値

ステークホルダーの皆様へ

われわれは、ASVを通じた持続的成長を実現し、社会から一層必要とされる存在となるために「ASVを通じた価値創造ストーリー」を中軸にした17-19中計を遂行中です。本「統合報告書2018」と「サステナビリティデータブック2018」を通じて、味の素グループがよりはっきりとした姿として捉えていただけること、さらに2020年度以降も味の素グループが持続的成長を続けるために、この報告書が皆さまとの新しい対話のきっかけとなることを強く願っております。

2018年7月

  • 代表取締役
  • 取締役社長
  • 最高経営責任者