全体

日本食品

  • 国内のバリューチェーン(以下、VC)の効率化の具体的な中身を教えて欲しい。また、本中計の説明会において本取り組みの業績貢献はFY20以降というコメントがあったが、コスト削減の金額と時間軸のイメージがあれば教えて欲しい。

    効率化はVCのパートごとに改善余地がある。生産についてはグループ会社も含めて段階的に設備投資を行って集約化を進め、省人化の進んだ最新の設備を導入する。具体的にどこの工場でどの程度という事はコメント出来ない。物流は発表済みであるが、他社と共同でF-LINEという会社の立ち上げに合意し、北海道から始まりFY19までに段階的に共同配送エリアを拡大していく。FY19には本州まで拡大されるので、大事な年になる。営業ではキーアカウント営業チーム体制を発足させ、CVS等の伸長する顧客へのソリューション提案力を強化する。バックオフィスについては、共通しているコーポレート機能を集約してアウトソースしたり、グループ内でまとめる事で省人化を図る。
    本中計の日本食品の増益計画には、これらの取組み効果も一部織り込んでいる。しかし、生産系の設備投資は段階的に進む為、総合的に業績上の効果が出るのはFY20以降になろう。
    また、物流もFY19に共同配送体制を全国で整備する為、その効果が業績に寄与するのはFY20以降になる。よって、本中計には織り込んでいない。全社共通費用は現状売上高の2.8%程度でコントロールしている。上記対応の為のインフラ投資で瞬間的に3%程度になるがその後は元の水準に戻す。

  • 日本食品および動物栄養事業で見込む特別損失の金額および計上時期イメージを教えて欲しい。

    国内VCの最新設備への転換で約40億円、動物栄養のスペシャリティ化で約40億円を見込む。
    戦略上の問題もあり、計上時期はコメント出来ない。

  • 本中計期間内に日本食品の利益率は1%の改善を見込んでいるが、これはVCの効率化によって実現するものか。

    VCの効率化影響は一部しか入っていない。本格的に業績寄与するのはFY20以降。生産設備の統廃合や合理化を同時には出来ない。バックオフィスについても、基幹システムへのインフラ投資が必要で、3年間の設備投資額増に繋がっている。基幹システムを刷新するにあたり、仕事の仕方や社内のレポート形式等の様々な整理が必要。1%の改善の大半は調達の効率化等の通常のコスト削減活動によって実現する。
    (プロダクトミックス改善や値上げも織り込んでいるのか、との問いに。)日本においては単純値 上げは難しいので、品質改訂を伴った値上げ等は一部織り込んでいる。
    (GP率1%改善の内訳を教えて欲しい、との問いに)GP率改善が全て事業利益に落ちる訳ではない。新たな事業を柱として育成するおいしさソリューションへのマーケティング投資もある。また、都道府県別の栄養課題解決施策も検討している。それらの費用増を加味しての事業利益率1%改善なので、GP率改善だけではもっと貢献する。

  • 今後のコーヒー事業の戦略を教えてもらいたい。

    コーヒー事業のリスクとしては2つあり、ボトルコーヒー事業は、売上は大きいものの利益は小さい。これは価格競争が激しい事が要因で、本中計ではかなり保守的な計画を組んでいる。もう1つのリスクは原料であるグリーンビーンズの価格。本中計では足許価格+αの前提を置いている。仮に、それ以上の価格になればマイナス要因となる。

  • 冷凍食品の競争環境はどうか。店頭では高単価の商品が売れている印象。今後もプレミアム品が売れていくのか。

    昨年11月8日の中間決算発表時、国内家庭用市場は活性化し、業務用市場は堅調であるとお伝えした。現状もこの傾向は続いている。家庭用市場は、弁当用は低迷も、食卓向けギョーザ、チャーハンは伸長。生活者ニーズは質の高いもの、および簡便化。背景にあるのは、特にコンビニでの冷凍食品の取り扱い率が高いこと。2005年以降の10年間の大きな変化。ドラッグストアでも力を入れており、住居に近いところで溶けるリスクがなく購入できる。この傾向は続くとみている。品質の高いもの、おいしいものというニーズに当社はリードできるポジションで応えることができている。次期中計でも大きく伸ばす計画になっている。

海外食品

  • 本質的な成長ドライバーは海外食品だと理解している。本中計では調味料・加工食品事業の現地通貨ベース成長率を2桁と掲げている。過去と比較して今回の中計で異なるのはRising Starsや味の素ウィンザー社が登場した事。一方でそれ以外の部分で何が変わったのかが未だよく分からない。タイの年平均成長率目標は+4%だが、海外事業構成比の多くを占め、未だ依存度が高く見える。今後の海外食品事業は従来の取り組みと何が変わり、売上高を2桁成長させる事が出来るのか。。

    タイの課題が顕在化したが、前中計の中でFive Starsの現地通貨ベース売上高は年平均9.3%成長した。タイに加えてフィリピンも多少足を引っ張り、期待までには届かなかった。一方で、そのマイナス要素全てをカバーする事は出来なかったが、Rising Starsの中には想定を上回る成長をした国々も出て来た。これらを踏まえ、再度2桁成長の目標を設定した。タイの足元業績はほぼ前年並み。特に「Birdy®」3in1と缶コーヒーの「Birdy®」については抜本的に手を入れていく。おいしさ設計技術をタイの「Birdy®」に注ぎ込んでいく体制は整った。また、AGF社とのシナジーについてもFY17から取り入れる体制が整っている。本格的に嵩上げをしていく。タイの売上高成長率1%減は海外食品事業の中で非常にウエイトが大きいが、落ち込みの原因はミャンマーの苦戦。ここについては、今秋よりミャンマーでMSG工場を立ち上げる。ミャンマーは軍政から民主化へ変わった事でより国内産業振興が優先となり、国内生産品でないと優遇を受ける事が難しくなっている。国内生産品の消費が高まっている。よってタイからの輸出は非常に難しい状況。僅か3年程でミャンマーにおける粉末飲料のマーケットシェアが急速に縮小した。今秋から「味の素®」の包装工場が建ち上がり、来年には「Birdy®3in1」も続く。現地生産が始まるという事は、非常に大きな意味を持っている。

  • Rising Starsについては持分化する事で成長するという説明だったが、Rising Starsの収益が増加する事について、もう少し具体的に教えて欲しい

    本中計ではRising Starsの現地通貨ベース売上高成長率を20%と掲げているが、まだ食品における地域別事業利益構成比の2%しかない。FY15は追い風もあり隠れていたが、ナイジェリアは非常に厳しかった。ナイジェリアは「味の素®」を展開する高収益な国だが、FY15、FY16とカントリーリスクにより事業が厳しくなり、Rising Starsの中でかなり足を引っ張っていた。プロマシドール社の持分を取得し、ナイジェリア味の素社とJV化する事でシナジーが生まれ、リスクヘッジが出来ると考えている。加えて、ナイジェリアの消費そのものが戻りつつある。本中計の中でナイジェリアの成長を戻していく。トルコについては非連結子会社であったキュクレ社とFY16に買収したオルゲン社を一緒にする計画でいる。元々非連結子会社だった事、更にオルゲン社が新規で加わった事でこれまで業績に含まれていなかったものが入ってくる。従って本中計におけるRising Stars売上高成長率20%というのは堅い目標である。
    (本中計の中で、ナイジェリアおよびトルコが収益に貢献する時期はいつになるのか、との問いに)ナイジェリアのプロマシドール社へは2016年11月に出資した。PMIには約1年掛かる為、FY18から業績に貢献してくるだろう。トルコは50%出資をし、非連結会社となっているキュクレ社をFY17からFY18の初めの頃までに100%化していく予定である。これによりキュクレ社とオルゲン社の2社が100%子会社となる。

  • 本中計の海外食品事業利益率は控え目に見える。堅めの目標設定なのか。

    味の素ウィンザー社については買収前よりも事業規模を拡大し、10%を下限とする事業利益率にしていきたい。このポーションが増加する事で、従来の調味料・加工食品を中心に展開していた頃のマージン約15%と比べると中期的には下がって見えるだろう。
    (海外調味料・加工食品事業についても過去と比較して控え目に見える、との問いに)うま味調味料・風味調味料と加工食品とではマージンが異なる。製品ミックスの変化だと理解して欲しい。新しいカテゴリーへの投資も行う。過去、うま味調味料・風味調味料を展開してきた事でドライセイボリー世界シェアが21%となった。約10年前はここまでのシェアは無かった。風味調味料も最初は儲かっていなかったが、トップブランド化する事で利益を得られる様になってきた。よって新しいカテゴリーにもマーケティング投資を行っていく。

  • 海外の風味調味料とメニュー用調味料のGP率について。トップラインを伸ばす上で、タイではミックス改善なのか。両者のGP率の差はあまりないとみており、売上増分の利益増しか見込めないと思う。GP率改善はあるのか。

    外部マーケット情報におけるメニュー調味料はケチャップ、マヨネーズ、スパイスミックス等を含み、収益率が低く、当社のターゲットではない。当社のメニュー用調味料は風味調味料のGP率に近い。しかし、育成時期はSGAが必要なので、その分、利益貢献はあまりできない。
    (高単価でミックス改善できれば、目に見えてよくなっていくのか、との問いに)一定の規模になってきているが、まだメニュー用調味料は売上の10%程。これを20%伸長/年を見込む。製品ごとにPLを持っているので、製品設計の時点からGP率を高くしている。その条件としてファーストランナーであることが大事。あとはマーケティング投資が必要なので時間がかかる。

  • 今後、タイの様に過去の成長トレンドが大きく変わるリスクのある国はあるか。

    その点はあまり心配していない。事業の構成比が高いのでタイに注目してしまうが、フィリピンも目標に対して未達となっている。フィリピンはFive Starsの事業規模だが、競争が非常に激しい。当社はGDP成長以外にも消費率等のデータも分析している。これらの指標から分析すると、本中計中に成長率が大きく崩れる国はないだろう。

  • Five Starsにおける新カテゴリーの立ち上げとは具体的に何を指すのか。

    メニュー調味料を差し、毎年20%強の伸長を織り込んでいる。例えば唐揚げ用の調味料。また昨今、東南アジアの大都市ではCVSが増加しているが、そのカウンターで販売しているホットデリ向けに冷凍食品を販売したい。タイが1つの試金石になるだろう。

ライフサポート

  • 動物栄養のコモディティの自社生産量をどの程度まで縮小するのか。当社が目指す事業構造は、いつ頃から盤石な体制になるのか。

    自社生産量は大幅に削減するが、戦略上数値では回答出来ない。構造を抜本的に変えようと思っているので、小規模ではないと言う事でご理解頂きたい。

  • コモディティの委託生産が動物栄養事業の最終形と考えてよいか。

    コモディティはご指摘の通り。スペシャリティ化に切り替えていく。コモディティを持たなくとも、ソリューション型ビジネスモデルに変えていきたい。
    (スペリャリティでフルラインナップ持つという理解でよいか、との問いに)Yes。FY16営業利益予想はコモディティ▲11億円、スペシャリティ11億円。まだスペシャリティの構成比が低い。今のまま、スペシャリティだけだとマーケットインができなくなる。FY20以降、スペシャリィが50億円の事業利益になった時に、この構造のままコモディティを持っている必要があるかどうか考えていきたい。コモディティとスペシャリティ双方で外部連携する計画。それぞれ、別の連携。ビジネスモデルを変えていく。スペシャリティは「AjiPro®-L」の第二弾、第三弾となる高機能配合品の継続展開なので、ビジネスモデルが変わったという印象は無いであろう。もう一つのICTを活用した診断型ソリューションビジネスはFY20以降にトライするために準備を進めている。これは完全にビジネスモデルを変えるものになるであろう。

  • リジンのOEM化はどの様な時間軸で進めていくのか。

    ゆっくりと進める気はないが相手のある事である。また原燃料等は中長期で調達する事が多い為、急に調達を打ち切ると契約違反に伴う違約金等のロスを生んでしまう。そのロスは出来るだけ小さくしたいと思っている。このような一時費用が許容できる範囲であれば、早急に実行したい。

ヘルスケア

  • アミノサイエンスも今後の当社を支える重要な事業である。受託事業における当社の強みは何か。味の素社とアルテア社があり、そこに新たにジーンデザイン社が加わった事で、当社の体制がどの様に変化し、どの様に成長していくのか。

    アミノサイエンス事業については近々スモールミーティングを開催し、説明していく。これまでの当社の受託事業は殆ど低分子だった。東海工場での生産の一部を除いては、殆どベルギーにある味の素オムニケム社がつくる低分子事業で売上高の大半を占めている。低分子はコモディティではないが競争が激しい。今は良いが、今後競合と競争する中で低収益化するリスクがある。当社の先端バイオ技術は中分子を効率的に大スケールで生産できる技術を既に開発していたが、この技術を使って受託生産する場所が無かった為、受託設備を保有するアルテア社を買収した。アルテア社はスタートアップ企業であったが、当社からの資本出資を設備投資に回し、規模をスケールアップできる資金を手に入れた。よって本中計では収益を刈り取れる時期に入って来る。ジーンデザイン社は中分子であるオリゴ核酸医薬開発支援事業を行っているスタートアップ企業である。テーマを沢山持っている。ここを手に入れた事で、当社が東海工場に保有していた大量生産できる技術に、ジーンデザイン社が持っている複数のテーマを繋ぐ事が可能となる。当社はジーンデザイン社を買収した事でパイプラインを手に入れた。ジーンデザイン社は中分子、アルテア社は高分子分野においてグローバルでトップ3に入る可能性を持つ。FY20以降は当社の柱にしていきたい。
    (この事業はFY19以降に花が咲くという理解で好いか、との問いに)Yes。