2003年5月7日

かつお節フレーバーの解明へ
−焙乾により香気成分が変化−
 味の素株式会社(社長 江頭邦雄)では、かつおだしやその原料となるかつお節の品質の向上につなげるために、どのような成分がかつお節フレーバーにとって大切なのか、またその成分はどのように生成されてくるのかに関する研究などを行っています。
 かつお節は、昆布とともにわが国を代表する重要な「だし」素材です。かつお節が日本で広く用いられている大きな理由としては、独特の好ましい香り、風味があると考えられます。これまで、かつおだしに含まれる味の成分(呈味成分)についてはほぼ解明されてきています。また、かつおをかつお節に加工する過程で生成されるかつお節独特の香り=かつお節フレーバーについては、現在解明が進んでいます。
 これまで、多数の香気成分がかつお節から見つかっていますが、一成分のみでかつお節フレーバーを示す成分は存在しません。かつお節フレーバーは複数の成分の微妙なバランスにより生み出されていると考えられます。かつお節は、煮熟、焙乾、黴付けなどの工程を経て完成されますが、その中で焙乾と呼ばれる「いぶして、乾燥させる」工程がかつお節フレーバーの形成に最も大切です。そこで、焙乾工程中の主な香気成分の変化に注目し、ガスクロマトグラフィー*1の手法を用いてこれを調べました。
 その結果、焙乾工程中に増加した成分は、ケトン類、芳香族炭化水素類、フラン類、ピラジン類、フェノール類などであり、これらの香気成分は大きく4つのグループ(肉質的な香り、魚の生ぐさ臭、香ばしい焙煎香、くん煙香)に分類できることがわかりました。また、くん煙香の成分(フェノール類)はくん煙から移行してくること、香ばしい焙煎香の成分(ピラジン類)はくん煙由来の成分がかつお肉由来の成分などと反応して生成することがわかってきています。
 当社ではこれらの知見を、新製品の開発などに活用しています。今後もかつお節の風味・香りの研究を深めつつ、よりおいしい製品をみなさまにお届けしていきたいと考えています。
 
かつお節フレーバーを構成する主な成分


*1 揮発性の物質の分析や精製に用いる手法。本研究ではガスクロマトグラフィーにより分離した香気成分を質量分析、または人が嗅いで匂いを確認。



以  上

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