うちの祖父は、大根の皮をむいてそのままにしておくと、「その皮はどないするつもりやねん?」と聞いてきた。皮を素材のひとつとして見ているか?ってことですよね。実を使って料理をする前に、むいた皮を刻むとか干すとかきちんと下処理をすることが必要になります。また、下処理は先にしてしまうのがポイント。
そうすると台所も片付いていく。後まわしにすると、面倒になってついつい捨ててしまいますよね。
魚も三枚におろしたら、まず骨の間に残った「中落ち」の身をきれいに取れと言われた。「つきぢ田村」では、この「中落ち」をせせって、茹でてほぐして、味付けして鯛茶漬けの素を作ってます。
これは、「ケチ」ではないんですよ。
いい魚の「中落ち」は安い魚の身よりもおいしい。だったら鮮度のいいうちに使ってお客さんに喜んでもらおうということ。
おいしい素材は丸ごと全部食べて欲しいですよね。だから、丸ごと食べるためにいろいろ工夫するんです。
料亭では、一番だしや二番だしなどありますが、家庭でやるのは大変だし無駄も多い。それよりも、「ほんだし」などを使うのもいいと思います。さらに、そこに昆布の角切りを一切れ入れると相乗効果でおいしくなります。ほんの一手間さらにかけるだけで、おいしくなりますから。
また、大根やかぼちゃの皮をむくとき、もったいないからって薄くむいてませんか?先に話した様に、皮も素材と思ってあえて厚くむくことで、皮ならではの食感や味も活かすことができ、もう一つの立派なお料理になります。干したり、キンピラにしたり、かき揚げにしたりね。
あと、「お得」と思って大きなものを買うでしょう。私は使う分だけ買うのもいいと思いますよ。たくさん使わないご家庭では、一升瓶のしょうゆを買ってどんどん酸化させてしまうより、小さい瓶で買っておいしいうちに使い切るほうがいいと思います。
最近、エコが話題になっていますがテレビのニュースなどを見ながら、親父と「おじいちゃんがやっていたことだよなぁ」と話しています。材料を無駄にしない、というのは調理場では当たり前のことですからね。
いいところを使って料理するのは誰でもできる、野菜のヘタでもヘタに見せてないというのが「料理人」なんですよ。それが「調理人」との違い。
ニンジンを切るときでも角度を変えて斜めに切っていくことで、同じ大きさになる。そうすると余分な端っこが出ないでしょ。
料理するときに、素材や相手を想うこと。それが、エコにつながるのではないでしょうか。素材を丸ごと全部、おいしく、残さず食べてもらおう、と考えて、いろいろと工夫することって楽しいですよね。楽しみながら、いろいろ試してみてください。
「つきぢ田村」の厨房で3代に渡って受け継がれてきた「材料を大切にする工夫」。それは、「おいしいものは丸ごと全部食べてもらいたい」との料理人の思いです。
「人の話をいろいろ聞くことで、また創意工夫につながる」と新しい挑戦をする田村さん。
材料を使い切るためにも創意工夫があります。
今回のかぼちゃの「丸ごと食べ切りレシピ」でも、厨房で生まれたひらめきをプラスして、新しい「エコうま」のアイディアを教えていただけました。